Sadananda Tomohiroさん(以下Tomoくん)は、名古屋近辺でヨーガ・英会話・ヒーリングを軸に活動を展開しています。
わずか10か月のオーストラリア滞在で自然な英語を身に付け、その後のインドでは通訳なしてヨーガのコースを修了。今では、海外で身に付けた英語とヨーガを活かして活動しています。
英語とヨーガ、どちらも共通して「そのものを教えているわけではない」というTomoくん。どちらもツールに過ぎず、それらを通して自分でなにかを見つけ出す喜びを感じてほしいと言います。
そんな彼にインドで学んだことや、今に活かせるマインドなどについて聞きました。
はじめてのインド 予定外の南へ
はじめてインドへ行ったのは大学生のとき。
それまでアジアの国々を旅してきて「次はどこへ行こう?」と考えていたとき、いつも行っていた美容院で「インド行ったら?」と言われて決めた。運よく、インド現地の人とのつながりもできた。
最初はデリーから入り、列車で南下してインドを縦断しようと思っていたが、連絡を取り合っていた現地の人に誘われたのは南インド。「じゃあ、南に行こう」とすぐに国内線のチケットを取って、南インドへ飛んだ。
「予定通りにいかないのがインド」と、Tomoくんは笑う。
南インドでは「ハグをする聖人・アンマ」のアシュラムに約1か月滞在。
そこは自分たちで野菜を育て、ゴミをコンポストにして、また畑に戻すという循環型社会を形成していた。Tomoくんはそこで、畑仕事やゴミを収集する仕事を担当した。
「循環する社会を目の当たりにしたのは、インドがはじめてだった」という。それがTomoくんにとってのはじめてのインドだった。
たった1回のヨーガで「なにか」が変わった
大学を卒業したTomoくんは、オーストラリアへワーキングホリデーへ。
英語習得のために意図的に日本人と話さないようにしていたが、不思議な雰囲気をまとった日本人男性と出会い、思わず話しかけた。
話を聞くとヨーガをしているという。そこでその人のヨーガを受けることにした。
メルボルンのとある芝生の上で、先生と2人。90分の予定が2時間以上、丁寧にヨーガを教えてくれた。最後のシャバーサナが終わり、目を開けたときの感覚が今までとは明らかに違う。自分の内側から見えるもの、「なにか」がものすごく変わっていた。
その不思議な感覚は翌朝も続き、「これはなにかが起きている」と感じた。たった1回のヨーガで、自分の中に大きな変化があったのだ。
そこで、またその男性に話を聞いたところ、南インドのアシュラムでシヴァーナンダ・ヨーガを学んだという。さっそく教えてもらったサイトを調べると、次のTTC(ティーチャー・トレーニングコース)がはじまるのが1月と書いてある。
ワーホリの期限は3月末まで。悩んだ。一瞬だけ。
「でも、10か月も1年も変わらんわ!と思って、ピッと飛行機を予約しました」
ビビッときたものに、パッと行動を起こす。未知への不安よりも「知りたい」気持ちがあふれて、行動に移してしまうという。
アシュラムでヨーガ漬けの生活
シヴァーナンダ・ヨーガ・アシュラムでの生活は、びっしりスケジュールが埋まっている。
- 5:00起床・シャワー
- 6:00サイレントウォーク(歩く瞑想)
- 7:00チャイ休憩
- 8:00-10:00ヨーガのアーサナ
- 10:30-11:30ランチ、その後アシュラムでの仕事やフリータイム
- 12:00-13:30座学(バガバットギータ)
- 14:00-15:00座学(解剖学)
- 15:30-17:30ヨーガのアーサナ
- 18:00-19:00夕食
- 20:00チャンティング(お祈り)&サットサング(先生のお話)
- 22:00就寝
これに日々の課題も加わる。ちなみにWi-Fiは1日2回、各1時間のみ使えるらしい。
「忙しかったけれど、寝る場所もあるし、ご飯も提供される。すごく守られた環境でヨーガだけに集中できて快適でした」
コースを受ける人は約300人。半分がインド人で、その他多くの国籍の生徒たちが一緒に学ぶ。各国の通訳までいるというから、かなり大規模だ。
1か月のコースが終わり、日本に帰国したTomoくんが、そのままヨーガの先生になったかと思いきや、そうではなかった。
「別にヨーガの先生になることが目的で、アシュラムに行ったわけではなかったので。とにかく『知りたい、学びたい』気持ちだけで、ヨーガを教えようという気は全然ありませんでした」
教育学部を出ていたTomoくんは、帰国後教員になった。しかし、いろいろと思うところがあり、1年ほどで退職。もともと好きだったコーヒーをやろうとバリスタになった。
ヨーガがつなぐご縁
バリスタとして働いていたTomoくんに、また転機が訪れる。
「え、それ人に教えられるじゃん。やってよ」と、仲良くなったお客さんからヨーガを教えてと言われたのだ。
そこで「名城公園の芝生でヨーガをしたあと、コーヒーを淹れてゆっくりする」という会を開いた。
これがきっかけとなり「ヨーガができるスペースがあるよ」「うちでもやってほしい」と、つながりが広がっていき、現在のようにさまざまな場所でヨーガを教えるようになっていった。
ヨーガを受けた人が「またやってほしい」と言うのは、それだけTomoくんのヨーガに魅力があるということだろう。Tomoくんはヨーガをするときに心掛けていることがあるという。
「僕がヨーガを教えるときは、なるべく自分の濃度を薄くしようと思っています。シヴァーナンダさんが作ったものを、僕のアレンジなく、伝統的なものをそのまま伝えたいという気持ちです」
違和感 そして3度目のインドで新たな学び
こうしてヨーガを教えているTomoくんだが、ヨーガを続ける中で違和感を覚えるようになったという。
「ヨーガをしていて、一時は心地いい。でも、その心地よさは一瞬で長続きしないんです。これをキープするために、一生シャバーサナしないといけないのかな?って思って。永遠に続く幸せってあるのかな?って、そんなことを考え出しました」
そこでオーストラリア時代に出会った日本人男性に連絡を取り、その疑問をぶつけた。すると「ヴェーダンタを学ぶといいよ」と教えてくれた。ヴェーダンタとは、インドの聖典「ヴェーダ」の一番最後の部分で、自分たちがよりよく生きるための知恵を教えてくれるものだ。
こうしてTomoくんはヴェーダンタを学ぶために、2022年末、再び南インドへ飛び立った。
「ヴェーダンタでは、徳を積むと、よりよいものを手に入れられると教えられます。この世はカルマ(因果応報)で、すべては過去の行いによって今が起きています。だから、今の状況を変えたいんだったら、今のアクションを変えることで、先のいい結果につながるんです」
ヴェーダンタを今の生活で実践する例として、Tomoくんはつい最近あった出来事を話してくれた。
夕方、電車を降りたときに片方の靴を履いていない女性を見かけた。違和感を覚えたものの、一瞬出口に向かって歩き出す。しかし、どうしても気になって、女性のところへ戻った。
聞くと、電車から降りるタイミングで誰かに靴を踏まれて、脱げた靴が線路に落ちてしまったという。それで、一緒に降りたと思われる場所に戻り、電車が来ないタイミングを見計らって、Tomoくんは一人線路に降りた。暗かったのでスマホのライトをつけて靴を探すと、無事に発見。線路からホームに登り、女性に靴を渡すことができた。
片方の靴を履いていない女性がいて、周りの人も誰も気にせずに歩いていた状況。自分も何事もなかったように素通りすることもできた。
「でも絶対に変だし、その人、靴がなくて困るだろうなって思ったんです。それで、戻って話しかけてよかったなって思いました」
小さな出来事かもしれない。けれど違和感を見過ごすよりも、行動できたら、そのあとの気分は違うだろう。小さな徳を積むこと、今の自分の行動を変えること。これがよりよい未来につながり、みんながそうやって行動できれば社会も変わるかもしれない。
インタビューを終えて
Tomoくんにインタビューして感じたのは、自分の直感に従って動くことと人とのつながりの大切さです。
Tomoくんは未来やまだわからないものへの不安よりも、「やりたい」と感じた自分の直感を優先して行動していました。そして、行動する中で出会った人とのつながりを一つひとつ大事にしてきたからこそ、それらがつながって今があるんだなぁと。
「今をよりよく生きるためにヴェーダンタを学んでいる」と言うけれど、Tomoくんの生き方そのものから、私たちもそのエッセンスを受け取れるのではないでしょうか。
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