西インド・カッチの刺繍がすごい!今も残る伝統の手仕事

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西インド・カッチの刺繍がすごい!今も残る伝統の手仕事
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前回の記事「西インド・グジャラート州カッチ地方がおすすめ!美しい工芸品や塩砂漠の魅力」では、ざっくりとカッチの魅力をお伝えしました。

その中でもカッチ最大の魅力は、伝統的な手工芸が色濃く残っている部分だと私は思います。カッチは刺繍やブロックプリント、織物、染め物などの手仕事が今も色濃く息づく場所です。

今回は、その中から刺繍に的を絞ってお伝えします。

インドにはラクナウ刺繍、カシミール刺繍など、地域によって異なる刺繍技法があり、それぞれに特徴があります。

カッチにも、カッチならではの刺繍技法があり、さらに民族によっても異なっているので非常に奥深い世界です。

この記事ではカッチ刺繍の特徴や魅力、刺繍ものが買える場所などを紹介します。

インド・カッチ刺繍の特徴

「カッチの刺繍」と言っていますが、もともとは遊牧民族だった人々によって作られていた刺繍でした。遊牧民は、昔はインドやパキスタンを自由に行き来して暮らしていた人々です。

そのため、カッチの刺繍技法はインドのみならずパキスタンやその他の国でも見られます。(この記事では、便宜上「カッチの刺繍」と呼ぶことにします)

では、カッチの刺繍とはどのようなものなのでしょうか?

「邪視除け・魔除け」のミラーワーク

さて、カッチの刺繍の最大の特徴は、なんといっても「ミラーワーク」でしょう。

カッチの刺繍
刺繍布を売っているお店にて。中央の大きな刺繍は、作るのに一体どれほどの時間がかかったのか……
カッチのミラーワーク
小さなミラーがびっしりと施されている

手で鏡を割って小さな鏡片を作り、布に縫い留めています。

ミラーには「邪視除け」「魔除け」の意味があり、ミラーを縫い留めることで、家族や自分たちを守る意味合いがあります。

玄関に飾るトーラン

カッチの伝統的な家

こちらはカッチの伝統的な家。物語に出てきそうなかわいいおうちですよね!

入口のところに布がぶら下がっているのが見えます。これは、玄関から悪いものが入ってこないようミラーワークの布を飾る習慣で、「トーラン」と呼ばれるもの。

カッチの刺繍(トーラン)
他の家のトーラン
カッチの伝統的な家(ミラーの壁)

実は家の中まで、このようにミラーがびっしり!本当にかわいいです♪

牛糞で家を作るカッチの人

家の前には、牛糞を床に塗っている女性がいました。インドでは牛糞を燃料にしたり、このように床や壁に塗ったりさまざまな用途に利用されます。

ただ、インドの都市部ではこういった光景も減ってきているので、田舎のカッチに来たからこそ見られたものでしょう。

花嫁衣装や赤ちゃんにもミラーワーク

西インド・カッチ

この写真は小さな村を訪れたときのもの。なぜかわかりませんが、私の右側にいる女性がこの服を着せてきました。

聞いたところによると、これは花嫁衣装だそうです。

ミラーワークの花嫁衣装(カッチ)
されるがままの私
ミラーワークの花嫁衣装(カッチ)

顔を隠す布をつけて完成形のようです。

ミラーがびっしり縫い付けてあって、とても重かった……

聞いた話によると、かわいい赤ちゃんや花嫁は周りから嫉妬や妬みなどを買いやすいので、それらから守るためにさらにミラーをびっしり縫い付けるのだそう。

文化っておもしろいですね!

女性の仕事

インドは男女ではっきり仕事がわかれている場合が多く、刺繍の仕事も例外ではありません。同じインドでもカシミールの刺繍は男性の仕事ですが、カッチでは女性の仕事です。

というか、カッチではもともと販売するために刺繍をしていたのではなく、家族のためにしていたものなので、家の女性たちが空き時間で行っていたことだったといいます。

カッチの刺繍にとりこになった私は「実際に習ってみたい」と思い、知り合いのガイドさんにお願いして、ある家に2日間通いました。

刺繍をするカッチの女性
伝統的な民族衣装を着た女性に刺繍を教えてもらった

ただ、一つ問題が。この女性は、英語はもちろんのこと、インドの公用語であるヒンディー語も話せない人でした。それどころか州の言語であるグジャラート語も話さず、カッチ語しか話せないとのこと!

インドは広い……

見てマネをするしかなかったので、2日通っただけでは全然わかりませんでした……(刺繍はこの数年後、日本で学びました)

カッチの刺繍
この家にある刺繍も見せてもらった

少数民族によって異なるカッチの刺繍

先にも述べましたが、カッチ地域にはもともと遊牧民族だった人々が暮らしていました。カッチの刺繍は、これらの少数民族によっても異なります。

ラバリ族

カッチのラバリ・ジャケット

世界的に知られているのは、このラバリ・ジャケットでしょう。ラバリ族による刺繍が施されたジャケットで、世界中のバイヤーが買い求めてきます。この写真を撮ったアンティークショップのオーナーは、「もうあまり多くは残っていない」と言っていました。

カッチのラバリ・ジャケット
後ろもびっしり刺繍

「残っていない」というのは、ラバリ族は1990年頃からこの刺繍を禁止してしまったからです。女性がこの刺繍に取り掛かることで、婚期が遅れるからとの理由のようです。そのため、このラバリジャケットは新たに作られておらず(現在は無地のものを着用)、貴重な品となっています。

ちなみに、これはラバリ族の男性が着る服です。ラバリ族はとても小柄なので、日本人女性にちょうどいいサイズ感でした。

ジャット族

カッチ・ジャット族の少女

これはジャット族の少女たちの写真です。ジャット族ならではの刺繍が入った服を着ています。

この少女たちの写真は、NGO「カララクシャ(Kala Raksha)」に飾ってあったものです。

カッチにあるカララクシャ(Kala Raksha)
カララクシャの建物もかわいい

カッチには、伝統的な工芸品を守ることを目的としたNGOがいくつかあり、カララクシャもそのうちの一つ。カッチの伝統的な刺繍を、外国人にも受け入れられるようなデザインで商品化し、少数民族の女性たちに仕事として依頼しているのです。

カララクシャのバッグ

こちらはカララクシャで買ったバッグ。ジャット族の刺繍は、細かいクロスステッチを使うのが特徴的です。

デザインやカラーがインド独自のものより控えめになっています。

他にもアヒール族、スーフ族、メグワル族などさまざまな民族の刺繍技法がありますが、長くなりすぎるので、この辺に留めておきますね。

カッチの刺繍が買える場所

実際にカッチの刺繍を目にすると、やっぱりほしくなるんですよね!ここからは、カッチで刺繍商品が買える場所をご紹介します。

カララクシャ(Kala Raksha)

まずは、先ほど紹介したカララクシャです。カララクシャではジャット族だけではなく、さまざまな民族の刺繍商品を作っています。バッグ以外に、服やストールなどもありますよ。

カララクシャ(Kala Raksha)

住所:Parkar Vas, Sumrasar Sheikh, Ta. Bhuj, Kutch, Gujarat 370001
サイト:http://kala-raksha-vidhyalaya.org/index.php
Instagram:https://www.instagram.com/kalaraksha/

カサブ(Qasab)

カサブ(Qasab)の刺繍
お店に飾ってあった刺繍布。すごすぎる……

先述のカララクシャと似たコンセプトの団体です。カララクシャと違うところは、カサブではシルク布を使っている商品が多く、光沢があります。

カサブ(Qasab)の刺繍バッグ
カサブのショルダーバッグ

光沢があるので、どことなく高級感があります。バッグだけでなく、服やクッションカバーなども取り扱っています。

カサブ(Qasab)

ブージに2店舗あり

・本店?(広く品揃え多い)
住所:Nutan Colony, B/h Navkar Eye Hospital, Jubilee Colony Road, Bhuj
※住宅街にあるので、ややわかりにくい

・プリンスホテル内ショップ
住所:Station Rd, Old Dhatia Falia, Bhuj, Gujarat 370001
サイト:https://qasab.org/
Instagram:https://www.instagram.com/qasabcraft/

その他

その他、カッチにある高品質な商品を取り扱っている団体です。

スルジャン(Shrujan)

1969年から活動している団体。現在はミュージアムやカフェもできているようなので、次に行くときは絶対に行きたい!

カミール(Khamir)

刺繍商品だけではなく、服やストール、サリーなどの布物から小物まで幅広く展開しています。

またブージのマーケットには、アンティークショップも多くあり、刺繍商品も購入できます。ただ、アンティークもののため、初心者にはやや難易度が高いかも。

カッチのアンティークショップの人
ブージ・アンティークショップの激渋おじさん。かっこよすぎて写真を撮らせてもらった。

カッチの伝統と現代社会のバランス感

私はカッチの刺繍に出会い、心を奪われました。カッチの刺繍を見るたびに、美しさにため息が出ます。

ただカッチの伝統工芸が消滅せず、今も残っているのは、カララクシャやカサブなどの団体の努力によるところが大きいと思います。

伝統工芸の存続が難しいのは、日本だけではなくインドも同じです。なにもしなければ、インドの伝統工芸も消えてしまうことでしょう。(実際、インドで一度消滅した後に復活された伝統工芸もあります)

伝統文化は素晴らしいものです。ただ伝統に縛られすぎず、今の時代にも合わせて柔軟に生き残る道を模索しなければいけないでしょう。

伝統的な技法は守りつつ、デザインや普段使いできる商品に転換することで、カッチの伝統工芸は存続してこれたのだと思います。

美しい伝統工芸品を今も残してくれているカッチの人々に、感謝の気持ちを込めて。

あきえ

2013年にはじめてインドに渡り、半年間のバックパッカー旅中に現地で仕事を見つけ、ニューデリーに移住、2年間滞在。帰国後もインドのボリウッドダンスや刺繍を学び、インドの文化に魅了され続けています。現在はライター・ダンサーとしてインドに関する情報を発信中。

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